皆さんこんにちは、アラサーフリーターのmamuです。
今回お話しするのは今でも忘れられない昔話…私が17歳の頃の思い出話である。
今でこそその片鱗も無いが、私は昔所謂ギャルと呼ばれる見た目をしていた。
派手な髪色に付け睫毛、当時『アゲハ系』なんて言葉があったが私はまさしくそんな感じであった。
そういう見た目をしていた理由については今回省くが、中身は至ってそのままと言うか…家族仲も今と変わらずかなり良く空の美しさとかに感動する感受性だ。
そんなバリバリのギャルだった私にはひとつ悩みがあった。
それが唐突に訪れたお尻の痛み…そう、切れ痔だ。
お尻が痛くて座るのも億劫で、当時の私はドーナツ型のクッションを愛用していた。
固い床からの刺激が緩和されて随分と楽になる私の相棒と言っても過言では無いクッション。
しかしである、そのクッションといつでもどこでも一緒!という訳にはいかない。
…そう 学校ではノークッション、固い椅子に座らなければならないのだ。
これが地獄だった、じんじん痛むお尻に集中力は勉学に向きなどしない。
バレない程度の空気椅子・左右片方に体重を傾ける等…主にお尻を護る為にその集中力を全部注いでいた。
自転車なんて基本立ち漕ぎである。
切れ痔の経験がおありの方ならその辛さに深く頷いてくれるだろうが、本っっ当に痛いのだ。
しかし、私は人に「自分は痔を患っている」とは話せなかった。
何故ならその当時最強と言われた華の女子高生…しかも見た目にも自分なりに気を使ったギャルだったからだ。
今なら「めっちゃお尻痛い!…え、痔 痔。うん切れ痔。」とあっけらかんと話せただろうが、当時の私は思春期な事もあり沈黙を貫いていたのである。
そんな私が病院へ行って治療を受けるなんてもっての外で、私は過酷な切れ痔をひた隠し時間をかけてじわじわと症状は悪化の一途をたどった。
同級生とキャピキャピしていても痔だし、プリクラを撮ってクレープを食べているその瞬間も痔だ。
私は笑顔で友人たちと過ごしていても、それらしくシリアスな相談をしていても全ての瞬間ずっと痔だった。
本当はずっと痛かった、本当に一番相談したかった事は切れ痔の事だった。
医者以外に相談した所で治るでも無いけれど、私は辛い痛みと戦っているのだと誰かに言いたかった!!
そうして無言を貫けば貫く程、痛みは悪化した。
切れ痔の痛みをどう例えるべきか悩んだが、ダイレクトに肛門が裂けていると思って貰えれば構わない。
その痛みに悶絶し、飛び跳ねたり…また逆に動けないなんて事もしばしば…。
肛門科を受診するべきか否か…。
私は毎晩真剣に悩んだ。
そんなある日の事、私はボラギノールを購入する事を決意した。
ボラギノール…CMでお馴染みの痔のお薬。
その存在をテレビで知った時喉から手が出そうなくらい欲しい!と強く思った物である。
キラキラしたギャルだった私が欲しかった物は、ブランド品(未だ興味なし)でもなく可愛いコスメでもなくボラギノールだったのだ。
日に日に強烈になる痛みは最早クッションだけでは庇い切れない物になっていた。
私は早い鼓動を隠すように素知らぬ顔でドラックストアに入店した。
軽快な音楽を右から左に、視線は救世主を求めて目まぐるしく動く。
当時の私がドラックストアで購入する物なんて付け睫毛くらいの物だ。
まさか『痔のコーナー』なんて所が存在する訳じゃ無いし、店内のどこにあるのかと私は隅々まで見て回って、漸くボラギノールと対面する事になった。
救世主…このお薬が私を痛みから解放してくれる…しかし何故だ!何故こんな所に…っ!
ボラギノールが陳列されていたのは、奇しくもレジの目の前だったのだ。
背中に一筋汗が流れる…これじゃあ自身の症状に合った物を選べないじゃないか!!
レジにはお客さんを待つ店員さんがひとり立っていて、店員さんは前を向いているだけでボラギノールと対面する形。
よって、私がボラギノールを購入するにはレジで恥ずかしいという難点の他にボラギノールを吟味している姿をも晒さねばならないという壁にぶつかってしまったのである。
私は奥歯を噛み締めながら目前に迫ったボラギノールの棚を素通りした。
それらしく付け睫毛のコーナーにて息を吐いた私は昨晩の事を思い出していた。
…こんな事もあろうかと練っていた作戦を繰り出すしかない。
この技は出来れば試したく無かったけれど…救世主の効能を預かるには致し方ない。
私は真っ直ぐにレジに向かい、店員さんに尋ねた。
「あの、切れ痔用のボラギノールってどこでしょうか…父が痔で…。」
そう、私の策は切れ痔という病を自身では無くあたかも父の病であるかのように偽るという物だった。
本当にどうしてそんな事になったのか覚えていないが、私は前日の晩父に宣言していた。
切れ痔が辛いからボラギノールを購入する旨、そして恥ずかしいから痔を患っているのは父だという事にすると。
そう告げられた父が「おう」といつものように言いながら半笑いだった事だけは鮮明に覚えている。
今思い返してみると、何故そんな謎の義理立てをしたのか全く意味不明だが…私は父の代わりにお使いにやって来た娘を演じる事で堂々と店員さんに向き合ったのである。
そうして無事に購入したボラギノールだが、ホッとした後に思い返すと切実にボラギノールを欲するあまり父の痔の筈が、めちゃくちゃ饒舌に具体的な症状を訴えてしまったので完全に私自身の購入物だとバレていた。
だって店員さん笑ってたもん。
だがしかし!!!そんな事救世主さえ手に入ったのなら些細な事だ!!
ボラギノールは本当に優秀な痔のお薬だった。
めっちゃ効いた。
こうして、決死の覚悟で手にしたボラギノールは存分にその効能を発揮しお尻の傷を癒してくれたのだ。
まぁ…心には傷を負ってしまったけれど…。
何かを得るには何かを失ってしまうものなのかもしれないなぁ…。
あの頃の私に「今はネットで何でも買えてしまえるんだよ」って言ったらきっと泣いてしまうだろう。
完
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