皆さんこんにちは、アラサーフリーターのmamuです。
私は昔からドジだった、過去を振り返ってみると赤っ恥も甚だしい事が山ほど出てくる。
更に絶妙に運が良いのか悪いのか…。
小学生の頃に朝礼中の全校生徒の前で派手にすっ転んだりした事は、私の中ではオーソドックスな失敗として捉えているのだが「一体どうしてこんな事に…?」と思ってしまう失敗が沢山あるのだ。
例えば、小学校へ入学してまだ間もない頃、高学年が校内を案内してくれるという行事にて案内してくれているお姉さんの手をずっと握っていた筈がいつの間にか迷子になってしまっていたり。
夏休みに向けて持ち帰る筈の植木鉢を抱えていたら階段から落下してぶちまけたり。
学校にある池にバランスを崩して落水したり。
自転車で曲がり切れずに(自転車下手だった)花壇に乗り上げて街路樹に突っ込み、ツツジの上に自転車と共に乗ってしまったり。
おつかいで卵を頼まれている時に限って転ぶ、気を付けて持って帰ってもほっとした瞬間に人と出くわし少し避けた先にあった外壁に卵をぶつけてしまったり。
最後には卵が割れないように卵だけ別袋にしてハンドルに掛けて(以前自転車の振動で割れた経験があった)更に袋が揺れないようにギュッと固定、しかし自宅マンションの駐輪所で丁度人と出くわして緩くブレーキを掛けた所カゴに打ち付ける形で卵は割れた。
私を『卵クラッシャー』と名付けて叱っていた母も、最後の最後には「あんた…可哀想やな」と漏らす始末。
新品の傘が自転車の前輪に刺さって、自転車のまま一回転した事もある。
そう言えば、電車とホームの間に片足が落ちてストッキングと素肌がズタズタになった事もあったな…。
…と、まぁ他にも沢山あるのだがこれまで大けがを負った事は無い。
これだけでも私が如何にドジで絶妙に運が良いのか悪いのか…ご理解頂けただろうか。
私は成長して社会人になっても相変わらずそんな感じで、社内でも大小様々なドジをやらかしていた。
特に他人を巻き込んでしまうような事は幸いないと思うのだが、何故かピッタリサイズの靴が脱げて3階から1階へ落下するとか。
清掃の際にゴミの大きさを見誤り、机と机の間につっかえて転びそうになったりといった事がしょっちゅうだった。
それでも職場環境が非常に良く、先輩方にはまるで娘みたいによしよししてもらっていて「仕方ないなぁ~(微笑み)」みたいな感じで見守ってもらえていたのだ。
特に少し年上の同部署の先輩とはめちゃくちゃ仲良くなって、それが後にルームシェアしてしまう親友ちゃんになるとは思っていなかったけれど、その話はまた今度という事で…。
とにかくそんな会社に入社して3カ月程が経ったまだまだ新人の時に私は盛大にドジったのである。
その日の朝は、家を出るのが少し遅くなってしまって私は非常に焦っていた。
お仕事なのだからそもそも遅刻はよろしくないのだが、新人社員の頃なんてもっての外だろう。
駅のホームには既に停車している電車が…これに乗られれば間に合う!!
焦りに焦った私は、すっかり皆電車に乗り込んで無人になったホームを走った。
『よかった…これで間に合う…!』
堂々と開いたままの扉を目前に捉えて私はホッとしてしまったのだ。
途端にもつれた足、盛大に傾いた身体、無情に鳴る発車ベルの音が響く中、無様に転んだ私の頭上を不穏な影が軽やかに飛んで行くのが見えた。
………ミュール…私のミュールだ……。
辛うじて視線だけで追ったそれは見事に電車内へ着地していて、慌てて上体を起こした私だが途端に扉はピシャリと閉まった。
呆気に取られて上げた視線の先で扉越しに驚愕していたサラリーマンの顔を未だ忘れる事が出来ないでいる。
多分私が呆気に取られていたのは一瞬で、その後迅速に会社へ連絡を入れて駅員さんに保護された。
ミュールが単体で乗車してしまっている件に関してもお話しし、隣駅の駅員さんがミュールを確保してこちらに届けてくれる事となったのだ。
左右揃ったミュールで会社に向かう頃にはすっかり遅刻。
一応パニックながら「すみません、遅刻します!」とは連絡していたものの、私にとってはここからが大問題であった。
いくら恥じても悔いても時間は巻き戻らない…遅刻してしまった事は受け止めるとして、その理由を一体どう説明すれば良いのだろう…?
『ホームで転んでミュールだけが電車に乗ってしまって』なんて馬鹿みたいな話を信じてもらえるだろうか…。
『寝坊した』とは言いたくないという謎のプライドもあり、もっと平凡な言い訳の代案を捻出するのに頭を悩ませた。
結局会社に到着しても代案は見出せず、遂に理由を尋ねられた私は正直に自身が起こした恥を語ったのである。
背筋を嫌な汗が流れて、目の前の上司の表情が困惑に染まる。
私は淡々と遅刻の経緯を説明しながらも『もっとマシな嘘をつけ!』と叱られる事を想定していた。
今までの人生の中でそう言われた事が何度かあったのだ。
正直に話しただけで真実を捻じ曲げる事を強要されるなんて釈然としないが、そんな経緯から正直に恥を晒すトリッキーな話をするより、ありふれた言い訳をした方が無難なのかと思い始めていた時期でもあった。
全てを話し終えた私はお叱りを受ける腹を括りながらも、上司の目を見詰めていた。
きっと飛び出すのは怒り声や溜息、呆れ声だと思っていた私の目の前で上司は笑ったのである。
お叱りも全く受けず、逆にケガは無いのかと気遣って頂いたくらい。
そして周りで聞いていた人たちも「またあんた、も~!」と当然のようにその事実を受け入れてくれた。
家族以外からそのように受け入れられた事が無かった私は心底驚き、そして嬉しかった。
ドジで間抜けなありのままの私を受け入れてくれる事が本当に嬉しかった。
…しかし……しかしである、誰一人として疑う素振りの無い皆の雰囲気はめちゃくちゃ複雑でもあった。
唐突にトリッキーな遅刻を決めても誰一人疑う事の無い…そんな人物危ない人じゃないか!!!
いや、デロデロに甘やかされていた事を考えると手のかかる子供がまたやらかした!くらいの感覚だったのかもしれないけれど…。
嬉しくも悲しい複雑な心境…。
私は、入社たった3カ月で多少のトリッキーさも温かく見守られるような『ドジ子供』みたいな人物だと受け入れられているという事実がそこにはあったのだ。
結局その後私が退社するまでその不気味な地位は確立されたままだった。
完
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