前回石見銀山を巡った様子を書いたが、今回はその2020年08月の旅の続きを書いて行こうと思う。
石見銀山を出たのは確か17時頃だった。
本来私たちはこの日帰る計画をしていたのだが、ここで急遽変更。
せっかく島根県までやって来たのだし、次にいつ緊急事態宣言が出るかもわからない。
携帯消毒液を常に持ち歩いている私。
配慮しながら行動する事は当然のこととして、私たちはこの日、車中泊する事にした。
実はこの前日も車中泊しながら島根県へとやって来たのだ。
車用寝具は抜かりない。
しかし本当に急遽の連泊だったのでバスタオルや下着の替えは持ち合わせていなかった。
とりあえずダイソーでバスタオルと下着を購入。
この時買ったバスタオルは車用として今でも親友ちゃんの車に乗っている。
さて、準備は整った。
観光を存分に楽しんでいい汗をかいた私たちが次に望むのはお風呂である。
一先ず目的地会議、目的地を温泉津温泉・薬師湯に決めた。
見付けた瞬間もう即決だった。
すっかり陽が暮れてきて空は綺麗なグラデーションを見せている。
私たちが目的地を温泉津(ゆのつ)薬師湯に決めた理由、それは至ってシンプルだ。
天然温泉なのに入湯料が安い、その上建物の外観がかわいいからである。
更に、温泉津は石見銀山の一角にある世界遺産の温泉だったのだ。
こんなのもう行くしかない。
魅力ポイントの乱立にも程がある。
私たちに「来い」と言っていると勝手に思った。
そして到着した薬師の湯は想像を超える良質な温泉だった。
まず外観を見て欲しい。
ステンドグラスがあしらわれたレトロ感満載の建物に、早くもテンションが上がる。
浴場前のスペースは4台程が駐車できる小ぢんまりとした駐車場があった。
大きいファミリーカーなんかは駐車できそうに無いので近隣の駐車場を利用した方が良いだろう。
あの真ん中の出っ張った部分が番台になっている、なんて心を掴まれる光景だろう。
それもその筈、温泉津は温泉地としては全国で初めて国の重要伝統的建築物群(町並み保存地区)に指定されているのだ。
薬師湯は勿論の事この温泉地自体が、どこか大正の香り漂う素敵スポットだったのである。
もう目から癒されてしまう、書いている今行きたい。
この時到着した時刻が遅く、閉館していたのでこの時の私たちは気付かなかったのだが実はこのお隣に薬師湯の旧館がある。
この旧館、実は大正8年(1919)に建設されたもので歴史ある温泉津の中でも温泉施設として最古の建築物なのだ。
調べてみると木造でレトロかわいい外観もさることながら、重厚で赴きある内装には圧倒される。
現在この旧館はギャラリーとカフェとして機能しているそうだ。
これを知ったのは自宅に帰ったその日だった。
正直めちゃくちゃ悔しい。
あの時に知っていたなら…。
しかし、知っていた所で営業時間を過ぎていたので土台無理な話。
なので私は、次こそ大正ロマンに浸りながらカフェで優雅にお茶でもしてやると強く心に決めている。
さて、ここから温泉に入る訳だが、暖簾をくぐると女湯には私たちの他に地元の方らしきご婦人がひとりいるだけだった。
正直観光地の静けさに寂しさを抱いたりしたが、この時ばかりは大いに喜んだ。
ご婦人は湯を堪能した後らしく、私たちとほぼ入れ替わりで出て行ったのである。
つまり世界遺産の温泉を私と親友ちゃんで2人占め!
県外からの来客も多いというクチコミを読んでいたので、何だか得した気分だ。
いざ天然温泉へ!
うおおぉ…!と思わず声が出た。
浴室中央にドドンと鎮座する浴槽。
クチコミサイトで事前に見ていても、生で目の当たりにするとその佇まいは圧巻だった。
幾重にも重なった湯の花が床までびっしり固まって、芸術的にすら見える。
日本温泉協会の審査で全項目で最高評価5を獲得した天然温泉。
自然湧出の100%かけ流し。
全国で9箇所だけの最高級天然温泉と言われる薬師湯。
入湯料は驚きの大人500円、子供200円。
…えっ…ほんまにいいの!?!?安すぎるやろ!!と逆切れしそうになるレベル。
いや…貧乏旅行をしている私たちには大変有難いのだが、質と料金があまりにも不釣り合いな上質さなのだ。
効能は糖尿病を含む生活習慣病から肩こり・リウマチ・神経痛・冷え性・慢性皮膚病・消化器・痔・婦人病など他にも様々あり、万病に効果のある泉質だとか。
浴室には温泉特有の硫黄の香りと湯気が立ち込める。
わかりにくいけどこの時の湯の色は金色だった。
しかしこの薬師湯、実は季節や時間によって湯の色は変化するそうなのだ。
この金色がエメラルドグリーンになったりすると言うのだから驚きである。
そしてこの雰囲気から石鹸なんかの持ち込みが禁止されていそうに思えるが、石鹸・シャンプー類の持ち込みOKなのも嬉しい。
浸かってみると熱かった。
調べてみると源泉温度、約45~6℃と書いてあった。
そりゃ熱い、たった数分でくっきりと肌が赤く染まる程だ。
長湯せずに何度も出たり入ったりを繰り返して楽しんだ。
脱衣所に貼ってあった薬師湯の楽しみ方にも書いてあったのだ。
泉質は炭酸で肌に気泡が張り付いた。
あと、個人的に柔らかい気がしたが、これは気のせいかもしれない。
「肌スベスベになれー!」と言いながら顔に温泉を浴びせまっくたりしながらじっくりと堪能した。
身体が芯まで温まる感覚は本当に久々だった。
脱衣所に設置されているイオン水を飲んだらホカホカの身体に染みた。
入浴後、涼むために薬師湯2階の休憩スペースへ。
開かれた窓から夜風が入って来る。
冷房は入っておらず年季の入った扇風機が設置されていたのだが、この自然風が火照った身体にめちゃくちゃ心地良かった。
3階には屋上テラスがある。
私たちも足を運んだが、夜の暗闇で何も見えなかったので2階へ引き返した。
親友ちゃんは屋上階の踊り場で見付けたセルフのコーヒーマシンでホットコーヒーを入れて持って来た。
うん、湯上りに贅沢な一時…。
優雅な気分で癒されていたのも束の間、2階に用意されている椅子やテーブルはよく見ると羽アリだらけだったのだ。
虫嫌いコンビ、驚異のスピードで薬師湯を後にした。
今思い返してもゾッとするけど、全く薬師湯さんが悪い事じゃないと私たちは考えている。
季節的な事や他に何かが、たまたまこの時に重なったのだろう。
虫が平気な人や虫好きさん達からはヒンシュクだろうけど、あなたがどうしても克服できない苦手な生き物を思い浮かべて欲しい。
それに知らない内に囲まれていたのだから、悲鳴を上げなかっただけ立派だと自分を褒めておく。
薬師湯を出ると陽はすっかり沈んで夜になっていた。
そして大正レトロなこの建物は、更に魅力的に見えた。
室内から漏れる明かりでステンドグラスが綺麗。
まるで映画に出てきそうな世界観だと思った。
こんなに素敵な温泉が500円…もう価値しかないだろう。
私は後日、両親にめちゃめちゃおススメした。
本当にこの温泉は是非体感してもらいたいと今でも変わらず思っている。
私の中で凄い温泉ベスト3には確実に入った。
もう出会えた事に感謝…。
もし出来る事なら温泉と握手したいくらいである。
さて、汗を洗い流して温泉でたっぷり疲労回復した私たちは寝床を求めて出発した。
目指すは『海の駅キララ多岐』その名の通り浜辺に面した道の駅である。
記載していないがこの日の前日車中泊した場所は異様に虫が多かった。
普通に夏だし山の中だったから仕方がないが、この日は羽アリの件も背中を押してどうしても虫に会いたく無かった。
山はダメだ、海に行こう!という実に安直な考えである。
それに翌日出掛けたい場所からも比較的近かったように思う。
夕飯はコンビニで購入した。
本来はご当地の地元密着型スーパーでお惣菜を買うのだが時間帯的に無理だった。
慎重に駐車場所を吟味する。
TSUTAYAでレンタルしてきたDVDをセットすれば、後は親友ちゃんと私だけの宴がスタートだ。
うーん、こうして見ると女子力の欠片も無いな。
私たちが楽しいので正直どうでもいいと思っている。
車はもう運転しない事を当たり前の大前提としてアルコールで乾杯!
私はハイボール、親友ちゃんは一途なビール党だ。
こちらの海の駅は私たちの読み通り虫の出現が本当に少なくて2人でご満悦。
DVDを見終えて今日の楽しかった出来事を語らい、歯を磨いて就寝。
…しかし誤算だ。
虫がほとんどいないのは大いに結構、しかし。
ちょっと想像力を働かせれば予測できた事なのだが、夏の海辺には元気な若者が集うのだった…。
全ての窓に遮光カーテンを貼り付けているので外の様子は見えないが、近からず遠からずの距離でエンジョイする若人の声がする。
アラサーとは言え一応女2人旅である。
この時私たちは何事もなく就寝し朝を迎えたが、身動きが取れない状態で非常に迂闊だったと反省している。
車中泊は楽しいが、細心の注意を払って安全に。
尚且つマナーを守る事が大切だ。
ずっと気を付けているつもりだったけど、この時の経験で初心に立ち直る事ができた。
本当に何も無く爆睡出来て良かった。
あの若人たちはただ、ひと夏の思い出を飾っているだけだったのだろう。
そして翌朝待っていたのは快晴の空と海の青だった。
さえぎる物が何もない開放的な景色に自然と胸が弾む。
午前中にもかかわらず沢山の人で賑わう様子は旅特有の雰囲気を盛り上げた。
どうやらこの当時、出来て間もなかったこの海の駅キララ多岐は屋外シャワーなどを併設していて海の家の役割を担っているのかな?
特に夏場は人で賑わう場所なのだろう。
私たちは泳ぐ予定もないけれど、キラキラと広がる綺麗な海が見れてちょっと贅沢な気分になった。
草木の緑と砂浜の白、海のクリアブルーが目に眩しかった。
さて、今回も長々書いてしまったのでここまでとしよう。
アラサーmamuの旅の思い出シリーズ。
次回で島根県編3巨木サヒメルへ続く。
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コメント
[…] 先日こちらで紹介した温泉津薬師湯は世界遺産”内”にある温泉だった。 […]
[…] 思いの外長くなってしまったので今回はここまでとして、後日続きを書こうと思う。 […]
[…] 今回も前回同様、島根県車中泊旅の続き。 […]